男性の脳は1つのことに集中しやすく、女性の脳は並行思考

顾汉现

2013年 12月 12日 17:40

男性の脳は1つのことに集中しやすく、女性の脳は並行思考に向いている？



脳の接続の性差を示す画像（上が男性、下が女性）

　非常に多くのことが「接続」に左右されるが、特に脳の内部についてはそのようだ。

　脳の配線図の性別による差異に注目した最近の幾つかの調査で、女性と男性では脳のさまざまな部位を神経線維がどのように接続するかという点で明白な違いがあることが明らかになってきた。このような決定的に重要な接続が数限りなく存在し、それらは遺伝や経験、生物化学などの相互作用によって形作られる。

　脳の神経経路の性別による差異がどのように思考や行動に伝わるか――男性と女性が通常現実を認識し、情報を処理し、判断を下し、社会的行動をとる方法に影響する可能性があるかどうか――は誰にも分かっていないが、議論の的になっている。

　南カリフォルニア大学（USC）のイメージング・ジェネティクス・センターのディレクターで神経学の教授、ポール・トムソン氏は「原因になっていることは間違いない」と述べた。同氏は神経画像を比較対照するために20カ国の2万6000件におよぶ脳のスキャン結果のデータベースを構築する取り組みを主導している。

　研究者たちは、（男性に多い）自閉症、（女性に多い）多発性硬化症から脳卒中、老化現象、うつ病にいたるまで広範な健康問題に影響する男女間の違いを説明する要因に注目している。カリフォルニア大学ロサンゼルス校でこの研究を主導した神経学者ネダ・ジャハンシャド博士（現在はUSC在籍）は「理解しようと試みる前に、まず違いを見つける必要がある」と述べた。

　ジャハンシャド博士とUCLAの研究者たちは2011年に、脳の接続を分析するために女性147人と男性87人の健康な双子たちの脳神経画像について研究を行った。その結果、博士は脳の前頭葉の複数の部位における「著しい」性差を発見した。前頭葉は自制や発話、判断などと関係する。

　これまでで最大規模の研究によって、ペンシルベニア大学の生物医学分析者ラギーニ・ベルマ氏が率いる科学者たちは、少女少年が成長するにつれ、脳の重要な部分の無数の接続の発達が男女間で異なり、その結果、若い男女の脳神経の接続パターンに差が出てくることを発見した。



脳の接続の性差を示す画像（左が男性の脳、右が女性）：1.学童期、2.思春期、3.成人初期

関連記事

脳についての新たな理論─上部脳と下部脳　：　http://jp.wsj.com/article/SB1000 ... 49250698533242.html
男性の視線は女性の顔より体に？ 一般通念を打ち破る医学研究　：
http://jp.wsj.com/article/SB1000 ... 05050653588032.html
自閉症に男女差があるのはなぜか　：
http://jp.wsj.com/article/SB1000 ... 68022782321746.html

　このチームは949人の健康な若者（内訳は8歳から22歳の女性521人、男性428人）の脳の画像を撮った。ジャハンシャド博士らと同様に、ベルマ博士は拡散テンソルイメージングと呼ばれる技術を使って、脳の白質神経線維に沿って水分子がどのように並んでいるかを分析した。白質神経線維は思考を司っている。この研究は今月、米国科学アカデミー紀要（PNAS）で発表された。

　ひとりひとりの脳の接続パターンには脳の形や構造など個性につながる差異が大きいが、ベルマ博士らが、数百人の脳神経画像を重ね合わせた結果、共通の接続パターンが表れてきた。

　バルマ博士の神経経路を示すマップは、神経の接続パターンの形成される瞬間の脳の状態を記録している。幼年期から脳は通常、1分当たり約50万というペースで神経細胞を生み出し、1秒に200万回接続する。5歳までには脳の大きさは平均で成人の脳の大きさの約90％に発達する。雑誌ジャーナル・オブ・コンプリヘンシブ・ニューロロジーに発表された2003年のデンマークの研究によると、20歳までには、脳には平均10万9000マイルに及ぶ白質神経線維が詰まっている。

　食習慣の結果や経験、生物化学が原因となり神経細胞やシナプスは情け容赦なく減っていく。子供のころから始まり、青年期を通して間欠的に減少し、その後中年期に再び減り方が激しくなる。バルマ博士は「子供のころには（性別による）違いはほとんど見られなかった」と指摘。「変化の大半は青年期に起こり始める。これは男女間の違いの多くが表面化する時期だ」と語った。

　概して、20代の女性は左右の脳半球の接続が多い一方、同世代の男性はそれぞれの脳半球内で接続が起きていた。バルマ博士は「女性は大体において、左から右、右から左といった左右の脳半球を越えた接続が発達している」が、「男性はそれぞれの脳半球内や、後からから前への接続が発達している」と語った。

　このことは、左右両半球の働きの協調が必要な並行作業や分析的思考のための接続については女性のほうが発達しているかもしれないことを示唆している。一方、男性は1つのことに集中する必要のある作業に向いているかもしれない。ただし、研究者たちはこうした結論はあくまで推論にすぎないと警告している。

ビデオ：　
http://jp.wsj.com/article/SB1000 ... articleTabs%3Dvideo