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一般成人とアスペルガー症候群の自殺リスクを比較
成人期アスペルガー症候群の患者は、一般成人よりもはるかに高い確率で、自殺を計画したり試みたりした経験があるという臨床調査データが、14-6月25日付で「ランセット 精神医学(The Lancet Psychiatry)」に掲載された。
これは、Sarah Cassidy氏らによる、英国の患者を対象とした臨床コホート研究による報告。2004年1月23日から2013年7月8日のあいだに、新たにアスペルガー症候群と診断された成人からの臨床調査で、レトロスペクティブ分析を実施した。臨床的評価の前に、患者は生涯におけるうつ病の経験、自殺念慮、および自殺の計画や試みなどを記録する自己申告アンケートを受けている。
同研究グループは、得られたデータを一般集団および他の臨床群における公表された自殺念慮の確率と比較したほか、うつ病や自閉症、感情移入といった要素と、自殺念慮や自殺の計画、試行の間の関連性について評価を行った。
一般成人の9倍以上の自殺リスク、うつ病が危険因子
同試験期間中、374人(男性256人、女性118人)がアスペルガー症候群と診断された。367人の回答者のうち66%にあたる243人が自殺念慮を自己申告し、365人中127人(35%)が自殺の計画および試行があったと答えた。また368人中116人(31%)がうつ病を申告している。
結果として、アスペルガー症候群の成人では、一般的な英国の人口サンプルにおける自殺念慮の生涯経験率と比べ、その可能性がおよそ9.6倍高いことが分かった。また1つか2つ、あるいはそれ以上の内科的疾患を持つ人々や、精神病の人々と比較しても高いリスクであることが示された。
また、アスペルガー症候群と診断された人のうち、うつ病でない人に比べ、うつ病を伴う人の方が自殺念慮や自殺の計画、試行を報告する割合が高かった。
同研究グループでは、今回の結果から、成人期のアスペルガー症候群とうつ病は自殺における重大な潜在的危険因子であると指摘している。アスペルガー症候群を持つ成人では、多くのケースで社会的孤立や排除、失業等で二次的うつ病の危険因子を生ずることから、自殺リスクを低減するための適切なサポートが必要だと結論づけている。(紫音 裕)
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