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2000人以上の専門家が予測。
今後10年間でインターネットが世界を変える9つのポイント
ライフハッカー編集部
2014.03.29 18:00
ワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web)が誕生して25年が経ったのを祝して、アメリカのピュー研究所(Pew Research Center)は2000人以上の専門家を集め、10年後にウェブと人々のライフスタイルがどのような変化を遂げているかを予測しました。
ウェブの誕生
25年前、英国の計算機科学者 ティム・バーナーズ=リー氏は、後にワールド・ワイド・ウェブと世に知られることになる情報管理システムの論文を発表しました。その後、同氏は1990年のクリスマスに、ウェブを実現するためのコードを発表しました。
その後は誰もが知っている通りです。ウェブの25周年を印象付けるため、ピュー研究所はウェブの社会的影響をより良く理解し、未来を予測しながら将来に備えるための一連の研究プロジェクトを実行してきました。米国エロン大学のImagining the Internet Projectと共同で、同研究所はHal Varian氏、Danah Boyd氏、Vint Cerf氏、Marc Rotenberg氏といった専門家2,558人に対し、2025年にはウェブがどのように変わっているか、そして私たちの生活にどのように関わってくるかについて調査を行いました。同研究所は、調査の結果を論文にまとめて発表しています。結果はポジティブなものとネガティブなものに分かれました。
1. 自分の周囲や、世界で起こっていることに対して更に敏感になる
私たちは、インターネットの浸透によってもたらされる物流の増加、人工知能の発達、ビッグデータを享受することになるでしょう。しかし、情報に対して敏感になるのは個人だけではありません。他人に対しても同じように振る舞うことになります。米ハーバード大学のバークマン・センターで「インターネットと社会」を研究するJudith Donath氏は以下のように述べています。「他人がどのように時間を使っているか、どんな趣味、夢、友人を持っているか、家族とどのくらい深く関わっているかなど、個人的な情報が手に取るようにわかってしまうでしょう。そのような情報が増えた社会では、他人に対する認識や関係性が変化するでしょう」
2. 情報の共有は、まるで呼吸をすることのように自然なことになる
2025年までに、インターネットは電気の供給や他の公共サービスと同じような位置づけになるでしょう。南カリフォルニア大学情報科学研究所のJoe Touch氏は以下のように述べています。「自分がオンラインであることや、インターネット上で何かを検索するという認識自体がなくなるでしょう。日常がオンラインになるのです。何か知りたいと思えば、情報はすぐ身近にあるのです」
3. 身体に装着して使用するウェアラブルデバイスが医療を変える
ウェアラブルデバイスによって、病気の早期発見だけでなく、病気の発症リスクを事前に認識できるようになるでしょう。このテクノロジーは私たちの生活を根本的に変えてしまいます。カリフォルニア大学バークレー校のソフトウェア開発者Aron Roberts氏は次のように述べています。この変化は「いつも人員不足に悩まされてきた医療業界を救うことになるでしょう」
4. 政府が統制能力を失う可能性がある
発展途上国の人々は、医療、教育、水、人権といった「先進国との格差」を更に意識するようになるでしょう。誰もが政府の巧みなごまかしを、今まで以上に認識できるようになるのです。その結果、より平和的な変化だけでなく、「アラブの春」のような政変が起こり易くなるでしょう。利害が透明な国家では、今までのような政府が支配するのはますます困難になります。 しかし、そのような事態に備えて、政府が新たな規制と監視の強化をすることも予想されます。
5. インターネットが(さらに)細分化される
未来学者のDavid Brin氏が1980年代に執筆したSF小説で次のように予測しました。「多種類の情報ネットワークが作られ、メッシュネットワークが自然に発生するでしょう。人々は複数の場所に別々の自分を持つことになるのです」LinkedIn上で「仕事用の顔」を持ち、親しい人とのコミュニーケーションをとるためにFacebookを使っているなら、Brin氏の述べていることが理解できるはずです。
6. 全ての人に教育が行き届く
米Google社のチーフ・エコノミストHal Varian氏は教育の機会について次のように述べています。「現在のインドや中国ではまだまだ教育の機会が行き届いておらず、素晴らしい頭脳を持ちながらまともな教育を受けられない人々が何百万人もいます。そのような人々が活躍できるようになれば、人類の発展に大きく寄与することになるでしょう」
7. 持てる者と持たざる者の格差は拡大し、暴力に繋がる可能性がある
ペンシルベニア州のアネンバーグ大学名誉教授Oscar Gandy氏は次のように予測しています。「経済活動がネットワーク化されることで、世界人口の一部に富が集中することになります。この流れは加速し、不平等が拡大するでしょう」ソーシャルメディアは不満のはけ口になっているだけですが、現状を打開する手段として使われる可能性もあります。ただ、「アラブの春」のように必ずしも平和的な方法が取られるとは限りません。
8. 今以上に、ハッカーなどの脅威にさらされる
「プライバシー」や「秘密」といった概念は過去のものとなります。世界の治安が低迷し、テロやサイバーテロが毎日のように発生するかもしれません。そして、ソーシャルメディアの影響力が増し、政治活動が大きく左右される可能性があります。あるスパム対策専門家は「一般のインターネットユーザーと比べて、ハッカーの影響力は格段に大きくなるだろう」と述べています。
9. プライバシーは贅沢品になる
2025年までに、比較的高学歴で裕福な人だけが、自分のプライバシーを守る能力を持つことになります。ただ、実際にプライバシーを守ろうとする人がいるかは、これからわかってくることでしょう。
暗い予想が多い調査結果でしたが、今回の調査は前向きな論調で締めくくられています。インターネットに関する法律や政策の専門家であるRobert Cannon氏は、次のように述べています。「前向きに考えれば、現状の問題を解決する技術こそが世界を変える技術なのです。つまり、解決すべき問題は既に明らかになっているということ。世界を変えるために、私たちは問題を共有し、協力し合う必要があります。ウェブの発展はそのような活動を促すチャンスになるでしょう」
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