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元・気・人:重度知的障害を克服して個展を開く、西崎亮さん /岡山
毎日新聞 2013年02月28日 地方版
◇躍動する筆、人を魅了する書体−−西崎亮さん(24)
巧みに動く筆先から生まれる書には魂が宿る。作品と向き合った人たちの心を癒やし、時には元気を与え、気持ちを穏やかにする。書全体から伝わる優しさが、見る人をじんわりと包む。
東区大多羅町の西崎亮さんが重度知的障害を伴う自閉症と診断されたのは2歳半。いつの間にか自宅から外へ出たまま行方が分からなくなったり、高い所が大好きな行動、睡眠障害など自閉症特有の行動が続いた。
塾講師の母真弓さん(51)と不動産業の父里志さん(58)は亮さんの行動にとまどったが、真弓さんは「10歳ぐらいまで、目を離すことができず、ハラハラ、ドキドキの毎日でした」と振り返る。
幼い頃から文字と数字に強い関心を示し、車のナンバー、商店の看板文字、童謡の歌詞などに格別の興味を示し、文字並べ、車並べなどで遊んだ。9歳から書を学ぶようになり、書の楽しさに目覚めたという。
亮さんは言葉で思いを伝えることはできないが、亮さんの気持ちや考えを代弁するかのように筆が自由自在に躍動する。個展で亮さんの作品に魅了され、地元薬局のオリジナル薬手帳のデザインに採用されたり、多くの人を引きつける書体を会社のロゴマークに採用したいという申し出も多い。
真弓さんは「亮が幼い頃には健常児に近づけようと、くたくたになるまで療育に取り組みました。でも、この子が本当に幸せになるためには、健常児に近づけることではなく、障害を受け入れて、認めることが大切だと考えました。それが子供への愛だと思います」と話す。亮さんの書の一つひとつに両親の愛が込められている。【小園長治】
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亮さんの書に真弓さんの詩を添えた作品集「CALLIGRAPHY BOOK」の出版を記念して3月3日、北区内山下1のルネスホールで個展を開く。1日だけの開催。午前11時〜午後6時。作品集の問い合わせはhttp://www.nishizaki-ryo.com/
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