政治へ私の声２０１２:「県自閉症協会」石原理事長・岡山

顾汉现

政治へ私の声２０１２:ＮＰＯ法人「県自閉症協会」理事長・石原秀郎さん　／岡山

毎日新聞　2012年12月14日　地方版

　◇当事者に寄り添って−−ＮＰＯ法人「県自閉症協会」理事長・石原秀郎さん（５３）＝勝央町

　２７歳になった長男が自閉症スペクトラム、いわゆるグレーゾーンの広汎性発達障害と診断されたのは小学６年の時でした。しつけができていない子と扱われ、何度も学校に呼び出されました。診断は出ても、先生も親も対応の仕方が分からなかった。本人は家でも学校でも責められ、中学時代は荒れましたが、養護学校高等部で専門の先生と巡り会い、気持ちよく過ごせたようです。現在は就労を目指して生活面を重視した施設にいます。

　発達障害は先天的な脳機能の障害ですが、周囲の対応が影響します。人間関係がうまくいかないと、うつ、ひきこもりなど２次障害を起こしやすい。親だけではサポートできないので、社会の理解を求めて啓発活動も進めています。障害者のサポートは手弁当のボランティアが主です。

　働きたくても、発達障害を含む精神障害は、法律で定められた障害者の雇用率にカウントされません。自分でお金を稼げることが大きな喜びになるんです。ワークシェアの考えが広がってほしい。

　日本は、障害者権利条約を批准していないので、次の政権でどうなるか心配です。最近も「発達障害の予防は可能」と誤った見解を示した国会議員たちがいます。もっと勉強してください、と言いたい。障害者自立支援法（来春から障害者総合支援法）は、福祉サービスの費用の１割を負担させるなど批判が多かった。法改正で負担能力に応じて支払う応能負担に変わったものの、政党の思惑で成立が遅れました。

　制度を作っても、その成果はどれだけ当事者に寄り添えるかによります。政治家は現場の人に向き合って政治に心と血を通わせ、多様性に富んだ社会を支えてほしいと願います。【山本麻美子】

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

　■ことば

　◇発達障害

　発達障害者支援法によると、発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害（ＬＤ）、注意欠陥多動性障害（ＡＤＨＤ）など脳機能の障害で、その症状は通常低年齢で発現するとされる。文部科学省によると、普通学級に通う公立小中学生の６．５％が発達障害の可能性があるという。