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医師法違反・薬事法違反:無免許でがん治療の未承認薬投与 元助教授が自ら開発 警視庁、容疑で家宅捜索
毎日新聞 2013年07月25日 東京朝刊
医師免許のない70代の医学博士の男が、自ら開発したがんの未承認薬を男性患者に投与したとして、警視庁は24日、医師法違反(無資格医業)と薬事法違反(未承認医薬品の製造、販売)容疑で、男が社長を務める医薬品製造販売会社(東京都八王子市)などを家宅捜索した。男性患者は約1年間、未承認薬の投与を受けた後、今春に死亡した。男は他の患者らにも投与していたとみられ、同庁は男の聴取などを通じ実態解明を進める。【黒田阿紗子】
捜査関係者によると投与していた未承認薬は免疫抗がん剤「カルチノン」。男は昨年ごろ、医師でないのにがんを患っていた男性にカルチノンを注射した疑いが持たれている。
男性患者は当初、別の病院で放射線治療を受けていたが、知人から「いい医者がいる」と紹介され、投与を受けた。しかし容体が悪化し、元の病院に相談したところ、男が医師でないことが判明。警視庁に相談しているさなかに死亡した。
男は1980年に医学博士の学位を取得していたが、医師免許はなかった。76年から杏林大学医学部に在籍し、実験動物研究施設でがん治療などを研究。助教授としてカルチノンにつながるがんの免疫療法を開発したとして特許も取得していた。
2005年3月に退職した後は、医師である息子が東京都文京区に開いた診療所を拠点にカルチノンを提供していたとみられる。10年3月に診療所が廃業した後は口コミなどで集まった患者らに対し、自宅を兼ねていた八王子市の医薬品製造販売会社で自ら投与していた可能性があるとみて調べる。
◇HPで「副作用ない」「治験パスに何百億円もかかる」 「カルチノン」と紹介、公然と販売
「死ぬ想(おも)いで研究を続けた結果、幸いにも誕生した薬」
男は会社のホームページ(HP)で、自らの手で開発した「カルチノン」を紹介。未承認であることも明かした上で、公然と販売していた。がんはラテン語で「カルチ」。がんが無くなる、という意味で「カルチノン」と名付けたという。
男はウサギの動物実験などを経て新しい免疫療法を開発したとして、96年には業界新聞に取り上げられた。関連する論文も発表している。
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