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自閉症男性の絵画、釜石の自宅で発見 12-11-20日まで大槌で展示
よみがえった作品「虎舞」を見詰める小林さん(右)と母真喜子さん=岩手県大槌町
岩手県花巻市の知的障害者施設に入所する小林覚さん(23)=釜石市=の絵が、東日本大震災の津波で被災した自宅から奇跡的に見つかった。小林さんの才能を見いだした養護学校時代の恩師が丁寧に洗浄するなどし、作品は輝きを取り戻した。自在な線と豊かな色彩で見る人を前向きな気分にさせる作品の数々は、岩手県大槌町のギャラリーに展示され、被災地を明るく照らしている。
自閉症で重い知的障害もある小林さんは、釜石市の養護学校を卒業後、現在の施設に入所した。施設の運営法人が開設する「るんびにい美術館」(花巻市)のアトリエで絵画、書などの創作活動をし、週末に父母の暮らす釜石に帰省する。
幼いころから絵が好きだったが、本格的に取り組み始めたのは、養護学校中学部で佐藤卓郎さん(61)=奥州市=と出会ってからだ。
佐藤さんは「自由で美しい線は造形性に優れ、リズミカルな色使いには音楽性を感じる」と小林さんの絵を評価。「『すごい才能があるのではないか』と思い、裏紙に描いた絵も捨てられなかった」と振り返る。
釜石市の鵜住居地区にあった小林さんの自宅は津波に襲われ、1階部分が大破したが、押し入れに保管していた養護学校時代の作品の多くは、流されずに残っていた。
両親が集めた作品の中から、佐藤さんが主に画用紙に描かれた鉛筆画など70~80点を水洗いして乾燥させた。強い筆圧で色が塗られていたため、相当数が色落ちせず鮮やかに息を吹き返した。
津波は小林さんの祖母小国ツネさん=当時(84)=、叔母悦子さん=同(47)=の命も奪った。2人とも、小林さんの絵の良き理解者だった。
作品展は、ツネさんや悦子さんが暮らしていた大槌町にあるギャラリー「ベルガーディア鯨山」で20日まで開かれている。よみがえった作品7点をはじめ、絵画や書計十数点を展示。絵はどれも美しい色合いで明るく、見た人を前向きな気分にさせる。
小林さんの母で、見なし仮設住宅で暮らす真喜子さん(55)は「話すことが苦手でも、人を楽しくさせる絵を描き続けてほしい」と話している。入場無料。連絡先はるんびにい美術館0198(22)5057。
2012年11月07日水曜日
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