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写真館を経営する自閉症児の母、フォトコンテストで優秀賞/横須賀
2012年10月14日
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優秀賞に選ばれた作品を手にする斎藤さん=横須賀市安浦町
横須賀市安浦町で写真館「アートフォトスタジオ」を営む写真家の斎藤記子さん(51)=同市東逸見町=が、「富士フイルム営業写真コンテスト」で優秀賞に輝いた。自閉症がある長男(16)の母としての横顔も持つ斎藤さんが目指すのは、「誰もが安心して来店できるスタジオ」。その思いやりが、写真に写る一人一人の笑顔を引き出している。
七五三、成人式、家族勢ぞろいの記念写真。20平方メートルに満たない小さなスタジオの壁には、斎藤さんの“力作”の数々が飾られている。幼い子のはじけるような笑顔と、それをいとおしげに見つめる両親の視線。「この表情、最高だよね」。大きく快活な斎藤さんの声が店内に響く。
朗らかさの裏には、苦労人としての過去がある。高校2年生のころに父が病気で他界。「進学する暇はない」と、卒業後に地元の写真館に就職した。修業を重ね、6年後に独立。34歳で結婚した翌年に、一人息子の小兵衛さんが生まれた。
1歳半健診で「発達に遅れがある」と指摘された。その後、自閉症があることが分かった。数年がたっても、わが子と視線が合わない、「ママ」と呼ばれない。母親としての実感が持てず、自身の存在価値への疑問が募った。
障害児の母の痛みが分かるからこそ、その不安に応えたいと思う。記念写真を残すことにためらいがある障害児の親もいるかもしれない。でも、「ここは全ての子どもと家族が楽しい思い出を残せる場所」。障害児も簡単に着られる二部式の着物などの衣装も常備、多くの来店を待っている。
富士フイルムの関係会社が主催する同コンテストは、営業写真に従事するプロを対象にした、50年近い歴史を誇るコンテスト。
今年は1万1115点の応募の中から149点が入賞し、斎藤さんの作品は銅賞に次ぐ優秀賞に選ばれた。
作品名は「ニッ!」。1歳の誕生日の記念にと家族が撮影を依頼した、愛くるしい男の子の写真だ。「こんなにたくさんの笑顔に出会える仕事ってほかにないよ」。地域に必要とされる限り、シャッターを切り続けていく。
問い合わせは、同スタジオ電話046(823)5346。
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