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沿岸部の高齢者、糖尿病の増加も懸念…岩手
医師「震災で診療できず中断多い」
東日本大震災で被災した岩手県沿岸部では、高齢者を中心に、高血圧と同様に糖尿病の治療者の増加も懸念されている。
県立大槌病院仮設診療所(大槌町大槌)の内科医で、糖尿病を専門的に診ている黒田継久・同副院長によると、同診療所には約300~400人の糖尿病患者が通院。9月の外来患者約1800人の約2割に相当するが、「実は、来院してくれない人がどのくらいいるのか、把握できていない」という。
津波でカルテが流されたり、患者が町外などに避難していたりして、治療を継続するよう注意を促せていないのが現状だという。黒田副院長は「震災後の一時期に診療できず、そのまま治療を中断した人も多い」と、被災者の血糖値の上昇や合併症の併発も心配する。
震災から1年以上経過し、体調を崩して来院した患者に血糖値の上昇が見られた。食事療法で対処している比較的軽症の患者ほど通院しなくなりやすく、病状の悪化に気付きにくいという。
食事を取らないことで血糖値を下げている患者もいるが、「食べないと、筋力が衰えて将来的には歩けなくなることもありうる」と警鐘を鳴らす。
こうした危険性のある被災者は、現状では、住民基本検診を通して確認するなど、方法が限られるという。黒田副院長は「『来ないのは患者の責任』と切り捨てず、地域の住民全員が、健康で長生きできるようにするのが目標だ」と話している。
(2012年11月17日 読売新聞)
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