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旅行業法
ボランティアバスは違反 観光庁が是正通知
毎日新聞2016年6月11日 15時00分(最終更新 6月11日 17時54分)
岩手へ出発するボランティアバス=津市西丸之内で2011年6月16日、谷口拓未撮影
熊本地震への派遣取りやめも
NPOなどがボランティアを被災地にバスで派遣する「ボランティアバス」で、公募した参加者から参加費を直接集めるのは実費だけでも旅行業法違反として、観光庁が5月末、業者への委託など是正を求める通知を全都道府県に出していたことが分かった。ボランティアバスは東日本大震災以降、全国で広がり、事実上“黙認”されてきたが、一転して厳格化の方針を打ち出した。多くは法に抵触するとみられ、熊本地震への派遣を取りやめる動きも出ている。
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旅行業法は主催者が報酬を得て運送や宿泊を行う場合、国や都道府県への事前登録を義務づけている。同法の施行要領では、旅行者から金銭を受け取れば、「報酬」と認定される。
通知は16-5月25日付で、「登録を受けていないNPOや社会福祉協議会が主催者となり、参加代金を収受してボランティアツアーを実施する事例が見受けられる」と参加費の徴収を問題視している。主催団体に対し、旅行業者として都道府県や国から登録を受ける▽業者にツアー自体や参加費の徴収を委託する−−などを指導するよう都道府県に求めた。
観光庁観光産業課によると、今年16-5月、熊本地震の被災地に向かうボランティアバスを巡り、各県や同庁に「旅行業法に抵触しているのではないか」との電話が多数あったことを受けた対応という。同課は「参加者を公募し、参加費を収受した時点で旅行業法に抵触する」とし、主催団体が利益を得ない場合も徴収は認められないという。
違法にならないのは参加費を徴収しない、または公募せず顔見知りだけで同乗−−の場合。影響は既に出ており、福岡県のNPOは5月中旬、熊本地震のボランティアバスについて、同県から「旅行業法違反では」と指摘を受けた。「誤解を招かないように」と3000〜4000円だった参加費を無料にした。大阪府などの団体は熊本への派遣を中止したという。
NPO関係者は「被災地のボランティア活動を続けるためにも何らかの支援策が必要だ」と話している。【尾崎修二】
ことば【ボランティアバス】
NPO法人や社会福祉協議会、有志団体などが、被災地にボランティアを派遣するためにバス業者を手配して組むツアー。参加者の交通費や受け入れ先の負担を軽減できるほか、渋滞緩和にもつながるとして東日本大震災以降に広がった。金曜夜に被災地へ向けて出発し、土・日曜に戻る「週末ツアー」が多い。東日本大震災から5年が経過した被災地では、観光や被災者との交流、防災教育などの要素を組み込んだツアーもあり、群馬県のある団体はこれまで100回で延べ3000人以上を東北へ運んだという。
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