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障害者の「性」 福祉の現場は黙殺していないか 自慰行為支援のガイドライン 新潟 「ホワイトハンズ」が作成
2013年04月27日 11:54
■新訳男女 語り合おう■
●「当たり前」に変えていきたい
「障害者に性欲はない」との誤解があったり、日常生活に追われて性の問題まで手が回らなかったり…。こうした福祉の現場を変えていこうと、新潟市の一般社団法人・ホワイトハンズが「知的障害・発達障害児者への射精支援ガイドライン」を作成した。自慰行為の仕方やマナーをイラスト入りで解説し、約250部を販売。法人代表理事の坂爪真吾さん(31)は「性は睡眠や排泄(はいせつ)と同じように基本的欲求。医療、介護、福祉の中で黙殺されている現状を改善したい」と話している。
ホワイトハンズが福岡市で開いた「障害者の性」に関する勉強会。介護現場でのセクハラや障害者への性的虐待についても解決策を議論した
ガイドラインを作成するきっかけとなったのは、坂爪さんが実際に対応した事例だった。
《20歳の自閉症の男性が、作業所の女性に抱きついたり、つきまとったりする。父親はおらず、母親一人で「自慰行為がうまくいかず、欲求不満になっているのでは」と悩んでいた。そこで、保健師と共に自治体の支援センターなどに相談したが「性問題には関わりたくない」「余計なことを教えないで」と
いう反応ばかりだった》
ガイドラインは昨年2月に完成した。31ページで構成。男子の射精や自慰行為を女性でも教えられるよう、イラストを多用して手順を示した。視覚的な指導が有効な子には特に効果的だという。性器を清潔に保つため、入浴の際の洗い方も説明。自慰行為をしてもいい時間などを記入する「約束表」の作成例も盛り込んだ。
1年前にガイドラインを購入した母親(41)に話を聞いた。知的障害を伴う自閉症の男子高校生を育てており、小学6年生のころから自慰行為に興味を持つようになったという。「息子はなかなかうまくいかず、イライラしていました」。母親自身も、成長の証しとは分かっていても、初めは受け入れられなかった。やめさせようとして情緒不安定になり、暴れたこともあった。
夫は仕事が多忙で幼いころから子どもと触れ合う機会が少なく、協力は得られなかった。同級生の親に相談しても「うちはまだ」という返答ばかりだった。
試行錯誤の末、今ではガイドラインを参考に、場所を決めるなど一定のルールを作ることができた。母親は「息子は恥ずかしいという感情を持ちにくいので、人前でやってしまわないか心配。学校の性教育でも取り入れてほしい」と話す。
福岡市発達障がい者支援センターにも「自慰行為がうまくできない」「子どもに教えられない」といった相談が寄せられている。
女性支援者や母親が自慰行為を指導すると、男子本人が「常に女性と一緒にするもの」と思い込んでしまう可能性もあるという。そこで所長の緒方よしみさんは「そう思わせない工夫が必要。できれば父親や男性支援者がする方が望ましい」と指摘する。
「性への興味や関心には個人差があります。欲求を肯定した上で、本人のペースに合わせた支援が必要」と緒方さん。女性の障害者については「性的虐待の被害を防ぐため、体の見せてはいけない大事な部分をきちんと教えることも大切」とアドバイスする。
今月、ホワイトハンズが福岡市で勉強会を開いた。福祉施設の職員を中心に約10人が参加。ガイドラインも配られ、活発な議論が繰り広げられた。
「障害がなければ自然と身に付くが、教えるのは難しい」「自慰行為ができることが自信や情緒の安定につながる」…。こうした声を踏まえ、坂爪さんは「性に関する支援は特別ではなく、日常生活の中で当たり前に行われるべきです」と強調していた。
◇「知的障害・発達障害児者への射精支援ガイドライン」は一部2千円(送料込み)。希望者はホワイトハンズ=025(230)3703=へ。
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▼ホワイトハンズ 2008年に設立。「障害者の性に関する尊厳と自立を守る」ことを目的とし、障害のため自力で射精できない脳性まひなどの男性に、介護の一環として有料で「射精介助」を行う。介助者はゴム手袋を着用し、利用者が介助者の体に触れることや性的な会話はできない。福岡県など18都道府県で延べ約380人が利用している。全国各地で「障害者の性」に関する勉強会も開催。
(2013/04/27 西日本新聞)
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