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女の気持ち:息子 三重県名張市・武内利子(主婦・68歳)
毎日新聞 2013年01月05日 大阪朝刊
知的障害がある40歳の次男(自閉症)は、20年間、自宅から離れて施設で生活している。その息子がつい最近、筋肉の病気「横紋筋融解症」と診断された。初めて聞く難しい病名に、2歳の頃に自閉症と告げられた時と同じ気持ちになった。その薬の副作用が体調の悪い時に出たらしく、薬の量を減らし、血液検査の結果を見て改善していくことになった。
息子は20年前、自宅での生活が限界になり、やむなく施設に入所した。「離れて生活はしているけど、いつも見守っている」という思いで、2週間に1回は帰宅させた。夫も仕事が許す限り一緒に旅行したり、ショッピングやおいしいものを食べたりと、楽しい時を過ごした。周囲の助けも借りながら頑張ってきた。
最初は自宅から遠い施設にいたのだが、近くの施設へと移ると、息子の状態も落ち着いた。息子が時々帰宅するのを、私たちも楽しみにしていた。そんな折、夫が認知症になった。お父さんの変化を息子も感じたのか、「家に帰りたい」と頻繁に言うようになった。
落ち着いてきたと喜んでいたのは、薬で症状が抑えられていたからなのだろうか。次第に息子から笑顔がなくなり、痩せてきたのが気になる。
息子を人一倍かわいがっていた夫は昨春に逝ってしまい、見守ることができるのは私一人になった。私は元気を出して通院に付き添いたい。そして息子が早く良くなり、また一緒に散歩がしたい。
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