|
日中首脳が会談 第2次安倍政権で初
日中首脳会談を前に握手を交わす習近平国家主席(右)と安倍首相=14-11-10日、北京の人民大会堂で(代表撮影・共同)
【北京=高山晶一】安倍晋三首相は十日昼(日本時間同日午後)、中国の習近平国家主席と北京市内の人民大会堂で約三十分間会談した。首相は会談で、第一次政権で掲げた「戦略的互恵関係」に基づき、両国が未来志向で関係改善を図るよう呼び掛けた。日中首脳会談は、二〇一一年十二月に当時の野田佳彦首相と胡錦濤国家主席が会談して以来、約三年ぶり(国際会議などでの短時間の接触を除く)で、第二次安倍政権では初めて。
両首脳は会談を前に握手を交わした。会談で、首相は、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)などで偶発的な衝突を避けるための「海上連絡メカニズム」構築に向けた協議を求めた。
首相は、習氏との会談について「日中両国が戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、関係を改善させていく第一歩になった」と強調。海上連絡メカニズムについては「メカニズムの実施に向けて、具体的な事務的な作業に入ることになる」と記者団に述べた。
日中両政府は七日、尖閣諸島問題や歴史認識問題をめぐって四項目の合意文書を発表したが、日中双方の解釈は異なっている。
安倍首相は九日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため北京入りした。首相の中国訪問は一二年十二月の第二次政権発足後初めて。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十日午前の記者会見で、日中首脳会談について「課題があるからこそ、両首脳が胸襟を開いて大所高所から意見交換するのは極めて大事だ」と語った。
◆対話継続へ努力が必要
<解説>安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が十日、約三年ぶりとなる日中首脳会談を行ったのは、国内総生産(GDP)で世界二位の中国と三位の日本が、隣国同士なのに首脳会談も開けない状態を、これ以上放置できないとの判断で一致したからだ。
日中関係に関し、首相は第二次安倍政権発足以来、強気の姿勢を貫いてきた。東シナ海や南シナ海での中国の海洋進出について、各国に「法の支配」の重要性を訴え、中国や韓国の反発を承知で、昨年末に靖国神社参拝に踏み切った。
それが今回、首脳会談の実現に向けて中国との間で四項目の合意文書まで作成。沖縄県・尖閣諸島をめぐり「領有権問題の存在を事実上認めた」と、中国側に宣伝されてもやむを得ないような表現も認めた。
これは首相の靖国参拝に「失望」を伝えるなど、東アジア地域の安定を求める米国の視線を気にしたのは確か。経済界や与党内にも日中の対立を放置したままの安倍外交への疑問があり、配慮せざるを得なかった。
首相は訪中に先立ち、テレビ番組で「日中のいがみ合いに早く終止符を打ってもらいたいと、みんな思っている」と話した。
中国も、十日に始まったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のホスト国。各国首脳を迎える中、隣国との緊張関係に手を打つ必要があった。
ただ、模様眺め的な「一時休戦」では意味がない。首相は今回の会談を日中関係改善の「第一歩」と位置づけているが、せっかく復活した対話が途切れないよう、努力を続けることが必要だ。
(北京で、高山晶一=首相同行)
|
|