|
なぜ引き下げ?…18歳選挙権実現
2015年06月17日 17時00分
山梨大のキャンパスに設けられた期日前投票所で票を投じる大学生(4月8日、甲府市で)
選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法は、17日午前の参院本会議で全会一致で可決、成立した。選挙権年齢の引き下げは、1945年の終戦直後に「25歳以上」から現行の「20歳以上」となって以来、70年ぶりとなる。週内にも公布され、1年後に施行される。来年夏の参院選から適用される見通しだ。(2015年06月17日)
◇
70年ぶりの見直しとなる選挙権年齢。引き下げの目的や選挙権を持つことになる世代の反応をまとめました。
実現するとどうなる?
新たに加わる18、19歳の有権者は約240万人で、全有権者数の約2%にあたる。衆院選と参院選のほか、地方自治体の首長や議会の選挙などに適用される。18歳以上の未成年者であっても、買収などの重大な選挙違反があった場合は、少年法の特例措置として成人と同様の処罰を受ける。(2015年06月17日)
なぜ引き下げる?
国民投票法では、憲法改正のための国民投票で投票できる年齢を原則18歳以上としました。ただし、法律の施行までに18歳以上20歳未満の人が国政選挙に参加することができるよう、公職選挙法や関連法の整備などを定めています。
日本国憲法の改正手続に関する法律 附則 第三条
国は、この法律が施行されるまでの間に、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。( 総務省ホームページ より)
海外では18歳が主流
海外では選挙権年齢は、「18歳以上」が主流だ。国立国会図書館の調査(2014年)では、197の国・地域のうち、8割以上が日本の衆院にあたる下院の選挙権を18歳以上としている。特に主要8か国(G8)では、日本以外の7か国が18歳以上と決めている。(2014年12月10日)
対象になる世代の反応は
引き下げに好意的な声
27日夜、東京都内で開かれた「18歳選挙権フォーラム」。松下政経塾の主催で、参加者約150人の4分の1ほどは高校生や大学生らが占め、与野党の衆院議員らのパネルディスカッションに耳を傾けた。
神奈川県藤沢市の高校3年生(18)は「国の未来を決定できる機会が増えるのは良いこと」と歓迎している様子。来春に18歳になる横浜市の高校3年生(17)は「若者の投票率は低いが、学校で投票の方法などを学べば政治への関心も高まっていくと思う」と話した。
◇
模擬投票で予行演習…「よく分からない」の声も
高校入学時から政治参加意識を高めようと、神奈川県では2010年と13年の参院選の際、全ての県立高校で生徒の模擬投票を実施した。
県立湘南台高校(藤沢市)では、13年参院選で、生徒が選挙公報などで各党の政策の違いを研究した上で模擬投票に臨んだ。市選管から投票箱と記載台を借りて、生徒有志が投票所の運営と開票を担った。
投票するかどうかの判断を生徒に委ねたところ、投票率は51%だった。投票後のアンケートでは「選挙に親近感がわいた」「1票の重みを実感した」という声の一方で、「政党が多くてよく分からなかった」との意見もあった。
(2015年05月28日)
学校での啓発は進むのか…識者や教師の声
18歳選挙権の導入をにらみ、総務、文部科学両省は昨年度末から、高校生用の主権者教育の副読本の作成を始めている。「模擬選挙など実践的な活動を手助けする内容にしたい」として、今夏の完成を目指す。
しかし、教育基本法の定める「教育の政治的中立性」を背景に、大多数の学校は依然、政治的な話題に消極的だ。
ある大阪府立高の教頭は「やらなければと思うが、保護者から『偏った政治思想を子供に押しつけているのではないか』と言われそうで踏み出せない」と明かす。私立高の校長の一人は「受験勉強が最優先で、保護者も望んでいない。わざわざ手を回すほどの余裕はない」と言い切った。
◇
関西学院大の稲増一憲准教授(政治意識論)の話「若者の投票率が低い理由の一つに、長年、学校が主権者教育に消極的だったことがある。有権者になって初めての選挙で投票した人はその後も投票を続ける傾向がある、との研究もある。18歳選挙権が実現すれば、学校での啓発は極めて重要だ」
(2015年05月14日)
|
|