Q1-1. 原発の危機に怯えてすごす状況はいつまで続くのでしょうか?[3/15-00:00]
A. 現状では正確なお答えを提供することはできません。放出された放射性物質の影響が無視できることが確認されれば、避難指示は解除されると考えられます。ただし、影響の継続期間は、放射性物質がどの程度放出されたかに大きく依存するため、現在、入手できる情報だけでは正確なお答えを提供することは困難です。
Q1-2. 放射線とか放射性物質って何でしょうか? よく言われる放射能とは違うのでしょうか?[3/15-00:00]
A. 「放射線」「放射性物質」「放射能」の関係は、「『放射線』を出す物質が『放射性物質』であり、その『放射線』を出す能力のことを『放射能』」と呼びます。分かりやすいように懐中電灯の場合に当てはめると、「懐中電灯そのもの=放射性物質」「光=放射線」「光を出す能力=放射能」に対応します。ただし、通例では「放射性物質」のことを「放射能」と呼ぶ傾向があり。それほど両者の差に神経質になる必要はありません。
Q1-4. いま現在、報道されている程度の放射線量でも被曝するものなのでしょうか?[3/14-14:00]
A. 放射性の原子が数十?数百個皮膚に付着しただけで、ガイガーカウンターで被曝が検出されます。今回の被曝程度は分かりませんが、検出感度は非常に高いため、少しの被曝でも検出されます。
Q1-8. 外出を控えた方がいい場合,半径何km程度が外出を控える目安となるでしょうか?[3/15-00:00]
A. 知人やインターネットの情報に従うのではなく,最新の情報に基づいている政府・自治体の方針に必ず従ってください.また,状況は変化する可能性がありますので,政府・自治体からの情報の入手は常に行ってください.
Q1-9. 「外に出ない」ということが防御策となりますか? [3/13-15:00]
A. 原発の近くに行かないことが第一です。政府の避難指示距離が目安です。そして外気に触れないことです。
Q1-10. 20km以上離れれば安全ということですが、外気に触れないというのは、東京でも同様でしょうか。東京在住の人は、肌を露出しての外出は控えるべきでしょうか? [3/16-14:27]
A. 福島と東京のあいだは200km以上離れています。被曝は風で運ばれる放射性物質によって引き起こされ、遠くなればなるほど放射能は薄まるので、現状は、東京にいる方が無闇に心配することはありません。ただし、政府の発表には注意し、指示が出た場合にはそれに速やかに従ってください。
Q1-17. 放射性物質の半減期とは何ですか? [3/13-15:00]
A. 「半減期」とは,放射性物質の量が半分になるまでにかかる時間のことです。この半減期は放射性元素の種類によって、短いものあれば長いものもあります。例えばキセノン137の半減期は3.8分、セシウム137の半減期は30年です。半減期が短いものはすぐに減ります。ただし、短期的には多くの放射線を出すので、皮膚への接触や吸い込みを極力避けることが必要です。一方,半減期が長いものは,放射線をほとんど出さずに安定です.ただし,長期的に緩やかに放射線の放出が続くので,影響がないか継続的な調査が必要になると考えられます。
Q1-19. 1時間で放射能が1/100 に落ちるというのが、ちょっと解せません。風向きとかでしょうかね。[3/13-15:00]
A. 放出されるのは、キセノンやクリプトンなどの希ガスの短寿命放射性同位元素が多いのです。たちまちレベルが落ちたなら、放出は長時間に及ばなかったと推測されます。
Q1-20. 第一原発付近の双葉厚生病院にて被曝者が出ているようなのですが?[3/13-15:00]
A. 第一原子力発電所の北北西4kmあたりのところにある、双葉厚生病院のグラウンドで自衛隊のヘリコプターによる搬送を待っていた三人が被曝したようです。除染(まずは体を洗う)が必要ということは、ここでの被曝とは原発から風で運ばれた放射性同位元素が体に付着しているという意味のようです。
Q1-22. 避難するときには何に気を付ければいいでしょうか?(口や鼻をふさぐ,避難所に付いたら服をすべて着替える,etc) [3/15-00:00]
A. まずは,冷静に行動すること,一人にならないことが大切です.なぜならば,焦って行動するあまり,交通事故を起こしたり,転倒したり,迷子になったりと二次災害が考えられるからです.放射線に対しては,原子力発電所周辺で測定された量が人々の健康に影響を与える量を大きく下回っているので,特別な対策を行う必要は無いと考えます.ですが,被ばくの量をより下げる為に,マスクをするなど対策は効果的です.
Q1-23. ヨウ素131による被曝は、どのていど危険ですか? [3/15-00:00]
A. 今回放出された可能性がある放射性同位元素のうち、ヨウ素131は特に気化しやすく、体内に吸収されると内部被曝を起こすのは確かです。そのため対応策の話が多く出ていますが、ヨウ素131は、一般的な甲状腺治療にも使われている核種でもあり、治療に用いられる程度の量では甲状腺がん増加の報告はありません。[最終更新:3/13-13:00]
Q1-24. 市販のヨウ素を含む薬品は被曝の対策になりますか?[3/13-15:00]
A. 専用に作られた「安定ヨウ素製剤」以外は、もともと飲むために作られたものではないので効果は期待できず、それどころか健康被害の可能性がありますので、飲まないで下さい。下記のページの「安定ヨウ素剤以外を服用することは危険です」もご覧下さい。 http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=750
Q1-28. 現在報道されてる被曝量で健康被害は出ますか?[3/16-05:00]
A. 被曝量の報道が推移していますので、基準だけ示します。一つ基準となるのは100ミリシーベルト(mSv)です。100ミリシーベルト以下なら,臨床影響(実際的な影響)は見られていません。これまでの報告を見る限りでは,今回は100mSvを超える可能性は低いと考えられます。(例えば、http://www.enecho.meti.go.jp/genshi-az/ray/ray_type/ray_type.htmlなどを参照)その場合には、「少量なので,健康に影響が出る放射線の量ではない」という説明が、最も適切であると考えます。
2. 原子炉の冷却について
Q2-1. 「原子炉の冷却機能が失われた」とはどのような状態なのでしょうか?[3/14-18:00]
A. 原子炉、特に燃料の部分を十分に冷やせなくなった状態を言います。原子力発電所では、核燃料から発生する熱(エネルギー)を、水などを循環させることで取り出して発電しています。冷却機能の喪失とは、冷却材(水)の循環を正常に行うことができなくなったなど、燃料を冷やすことができなくなった状態のことです。
Q2-2. (冷却に用いるのは)真水でなく海水で問題ないのでしょうか?[3/13-13:00]
A. 原子炉配管は「純水」が常識ですが、今は冷却の方がはるかに重要です。純水を使っていたのは主にメンテナンス期間を伸ばしてコストを下げる為です。この炉をまた使うということは考えられないと思います。
Q2-3. 「純水」でないとどのような問題があるのでしょうか?
A. 簡単に言うと、配管が錆びて、穴が開いて、放射能が漏れます。だから原子炉の冷却水は通常は純水です。今はそんなこと言っていられる状況でないので、とにかく海水で冷却が必要なのです。
Q2-4. 錆びて穴が空くという事態は、今すぐに生じ得る問題ではないと考えてよいのでしょうか?海水を入れた装置を今後使わなければ問題ないということですか?[3/13-13:00]
A. 「長期運転するうちに穴があく危険が」という意味です。今は冷却することが先決です。
Q2-5. アメリカから援助船が向かっていますが純水を得られる手だては有るのでしょうか? [3/13-13:00]
A. 「いま」冷やすことが必要です。格納容器をホウ酸入海水で満たして、冷却しきることが大事です。
Q2-6. そもそも地震直後に運転停止はなぜできないのでしょうか? [3/13-13:00]
A. 「運転」は停止しています。制御棒を入れ、核分裂連鎖反応は止まっています。しかし、核分裂で生じた放射性同位元素が燃料棒にあるので、その崩壊熱で温度が上昇しますから、冷やす必要があるのです。
Q2-10. 冷却水がどこかから漏れていたということは、海水を入れてもどこかから漏れてしまい、満たすことができないと思うのですが。だからこそ、圧力容器ではなく格納容器ごと満たそう、ということでしょうか? [3/13-13:00]
A. 確かな回答が出来るだけの情報がありません。「漏れていた」といいうのは、水面低下データにもとづく推測です。
Q2-11. 冷却水の循環が止まった結果沸騰して水蒸気になった可能性はあるのでしょうか。[3/16-05:00]
A. 水を圧縮しても体積は減らないので、水蒸気圧力上昇で水面が大きく下がることはありません。やはり水がどこかから失われたと考えるのが妥当だと思います。
A. 訂正します。結論から言うと沸騰は起きています。冷却水が沸騰することで水面が下がり、同時に圧力が上昇するという問題が起きていると考えられます。
ここでは沸騰について絞って説明します。
そもそも原子力、火力などの蒸気発電施設は、水蒸気でタービンを回して発電します。福島第一で採用されている沸騰水型原子炉(BWRと略されます)は、通常の運転時には炉心で冷却水を沸騰させ、蒸気を発生させています。その冷却水が循環することで燃料を除熱するため、沸騰が起きていても燃料の温度上昇は抑制さ れます。その結果、炉内の圧力は一定に抑えられています。緊急停止時は最初沸騰が生じていますが、炉内の水が循環していれば燃料は冷却され、次第に沸騰は収まっていきます。しかし現在は炉内の水の循環ができないため、冷却が十分に行えていません。冷却水の沸騰・水蒸気の発生が続き,圧力の上昇と水位の低下を招いてしまいました。そのため、格納容器と圧力容器の圧力を下げ、海水で満たして燃料を冷却する作業を行っているところです。したがって、沸騰が起き続けている炉心に海水を加え続けて冷却している、とも言えます。
Q2-12. 原子炉に注入した水は,その後どのようにして廃棄するのでしょうか?周囲の環境を汚染する懸念はないのでしょうか? [3/14-18:00]
A. 廃液は一般的には放射能が減衰するまで十分に時間をおいた後、放射線の量の高くないものはフィルターを通してから廃棄します.放射線の量の高いものは煮沸することで,放射性物質を固形物の形で取り除いてから廃棄します.しかし,今回は注水される水量が非常に大きいものですので、どのような処理が最終的に採用されるかはわかりません。
Q2-13. なぜ純水ではなく海水注入の決断が,地震の1日半後と遅れたのでしょうか? [3/15-00:00]
A. 本来ならば真水(質問では純水になっていますが、正しくは真水です)での冷却が望ましいです。なぜなら、海水では鋼鉄でできている原子力容器がさびてしまい、その事故後使えなくなってしまうからです。しかし、福島第一原発1号機のケースでは、真水の調達・注入が間に合わなかったか、全ての貯水タンクの真水を全部使い切ったのではないかと推測されます。そこで事故後に原子炉を使うことを諦め、海水を注入することになったと考えられます。
Q2-14. 原子炉が完全に停止するのはどういう状態でしょうか。燃料棒がある限り冷却は続ける必要があるのでしょうか。 [3/15-00:00]
A. 「完全に停止」の定義は明確ではなく、何を「完全な停止」とするかにより説明が異なります。例えば,「自動停止」と報道で言っているときの停止は,核燃料中のウラン等の連鎖的な核反応が止まっている状態を指していると考えられます。これは地震直後に自動的に達成されています。しかし、この自動停止後にも、原子炉は完全に停止しているとは言えません。その原因は「崩壊熱」というものにあります。原子炉が自動停止したときに、連鎖的な核分裂は止まりますが(運転停止)。核分裂生成物(核分裂によって生じる物質)が既に発生しているため、その崩壊によって熱が生成されます(外部リンク参照)。これを崩壊熱と言います。燃料の状態等にもよりますが,その発生する崩壊熱の量は原子炉の出力と比較して、運転停止1秒後で12分の1程度、1日後で200分の1程度、1週間後で800分の1程度に減少していきます(米国原子力学会の下部委員会ANS-5による:1968年)。そのため、この崩壊熱が大きいとき、つまり運転停止直後には、大きな冷却機能が必要になります。また、長期的にも冷却機能への要求は下がっていきますが何らかの冷却は必要であり、例えば原子炉の通常の使用済み燃料の場合は、取り出した後に水中で保管されることになります。。
Q2-16. 冷却装置が一斉に壊れたのはなぜなのでしょうか。ポンプが壊れ、ディーゼル発電機が使えないのはどうしてでしょうか。一つ壊れたらもう予備はないのですか。また、福島第一原発ではすべての原子炉の冷却装置が一斉に同じ壊れ方をしたように報じられていますが、なぜそのようなことが起きたのでしょうか。
A. 想定を超えた地震や津波の影響があるものと推察されますが、現在のところ、福島第一原子力発電所の内部で具体的にどのような不具合が起きているのか詳しい情報がないため、明確に回答することはできません。その上で、より一般的な事項について以下に何点か補足します。原子力発電所では、緊急時冷却系やディーゼル発電機をはじめとする安全上重要な機器については複数個(通常は2-3個)設置されており、仮にそのうちの1つが故障して動かなかった場合でも、残りの機器が正常に作動することにより原子炉を安全に停止し冷却できる仕組みになっています。今回、福島第一原子力発電所でどういった事態が発生し現在の状況に至っているのか詳しい情報が発表されていないため、確かな回答をすることはできませんが、全ての冷却系やディーゼル発電機が動作しない背景には、想定を超えた地震や津波による関連施設への被害があるものと推測されます。
「A *nuclear meltdown* is an informal term for a severe nuclear reactor accident that results in core damage from overheating.(メルトダウンは、過酷な原子炉の事故の結果、過熱により炉心が損傷することを指す正式でない用語である。)」──http://en.wikipedia.org/wiki/Nuclear_meltdownより
Q5-4. 福島第二の状況も気になります。冷却が十分でないのは同じと思いますが、第一と同様の対応が必要でしょうか。[3/13-13:00]
A. 気になりますが、3/13 13:00現在、周辺の放射線レベルは正常値です。福島第二原子力発電所の排気筒からは、放射性物質は放出されていません。
[追記]3/14の18時ごろに第2原発の1・2号機は冷温停止したと発表されています。
Q5-8. 福島第一および第二原発のことが大きく報道されていますが、女川や東海村をはじめとする近隣の他の原発はどのような状況にあるのでしょうか。安全に停止しているのなら、そのことを知らせてほしいです。[3/15-21:00]
A. 東北・関東周辺の原発(福島第一・第二原発以外)の状況:女川、泊、柏崎刈羽、浜岡は問題なし。東海第二(茨城県)は非常用電源で炉心冷却中、現時点では冷却能力維持。核燃料サイクル施設(青森県)は異常なし。[ただし、この項執筆時点のことです。最新の情報は必ずそれぞれの情報サイトでご確認下さい]以下に、個別の発電所について現在の状況を述べます。今回の地震による大きな揺れや津波の被害を直接的に受けた地域(関東・東北地方)周辺の原子力発電所の現状(福島第一および第二原子力発電所以外)は、3月14日17:00現在、下記の通りです。
※注釈:以下において、「冷温停止」とは、原子炉内の燃料の核分裂停止に成功し、かつ冷却能力を十分維持した上で、冷却水の温度が100度未満,原子炉圧力が十分低い値で安定している状態のことを指します。
Q6-1. 被災された方の発言をテレビで聞きましたが「避難しろと言われるなら避難するのは仕方ないが、きちんと説明を受けて納得した上で避難したい」とおっしゃっていました。もっともなご意見だと思いました。何が起きているのか、何がどう危ないのか、避難の目的は何を回避するためなのか(どのような危険や健康被害が予測されるのか)等の点について、情報が足りないように思います。[3/16-13:00]
A. 福島第一原発では通常よりも高い放射線量が確認されており、健康に影響を与えるような被曝を避けるために避難が求められています。ただし、適切な避難を行えば、現状の報告(3/14,10時現在)から予測される放射線の量は健康被害につながる量ではないと考えられます。